「残暑」っていつから?季節の節目「二十四節気」の「処暑」
夏は終わったのに、夏の暑さが残っていることを残暑と呼びますね。
久しくご無沙汰している人へのお便りも、「暑中見舞い」から「残暑お見舞い」といい方を変えなければなりません。
そもそも残暑っていつからのことを指しているのでしょう。
その節目は、季節を24の時期に分けて気候の移ろいを考えた、旧暦にあるようです。
夏の時期は小暑、大暑の2か月間
古来日本では、季節の変化を表すのに、「二十四節気(にじゅうしせっき)」と呼ばれるものが使われてきました。
春夏秋冬の「四季」の一季節=三か月を、それぞれさらに半月毎の6つの「節」に分けたものが、「二十四節気」と呼ぶものです。まさに、季節の変化を示しています。
「二十四節気」をさらに約5日おきに分けて、気象の動きや動植物の変化を知らせる「七十二候(しちじゅうにこう)」というものもあり、季節の変わり目や気候の変化の様子などを細やかに表すのに用いられたようです。
「二十四節気」も「七十二候」も、もともとは中国で作られましたが、今の日本で主に使われているのは、明治時代に改訂されたものだそうです。
さて、この旧暦の考え方の素となっている「二十四節気」によると、本格的な夏の始まりは「小暑(しょうしょ)」と呼び、7月7日の七夕、ちょうど梅雨が明けそうな時期をさします。
そこから約15日後くらいに「大暑(たいしょ)」とよぶ、夏真っ盛りが始まります。
太陽暦で言うと7月23日ころ。ちょうど海開き、山開きがあり、学校は夏休みになる、まさに夏本番のスタートです。
7月28日ころには、いよいよ真夏日が続いたりして、陽が落ちた後も蒸し暑さが抜けない時期です。
「七十二候」の言い回しによれば、“土潤溽暑(つちうるおうて、むしあつし)”と表現したりするそうです。土までじっとりと湿気で湿っている感じがなんとも、暑苦しいですよね。ちなみにこの4字熟語の下の2文字を取って、蒸し暑いことを「溽暑(じょくしょ)」と言うそうです。
さらに約1週間後の8月2日頃には、旧暦では“大雨時行(たいう、ときどき、ふる)”と呼び、「ときどき大雨が降る頃。」としています。台風というよりは、夏の定番、入道雲が湧き上がり、夕立がざーっと降る季節のイメージですね。
まだまだ夏が続くのか・・・と思いきや、旧暦の二十四節気によると、意外と早く「秋」がやってきます。8月7日ころの、お盆の前の時期に、やって来る「立秋」です。
まだまだ暑いのですが、夕立がやんだ後、風向きが海や川から吹き込んできたときの夕暮れ時の一瞬、少し涼しいと感じる風が吹きます。昔の日本人は、これを「秋が来た」と感じたようです。
残暑は秋がやってきた後に、戻ってくる暑さのこと
「残暑」とは、この「立秋」のあとにまだ残る暑さのこと。秋はフェイントだったんですね。早く暑さが収まってほしい・・・と願う気持ちの表れかもしれませんし、夏バテにも気を付けたい時期です。
時期としては、ちょうど西暦では8月の上旬で、会社などがお盆休みになる前ですから、まだまだ秋というイメージは遠いかもしれません。
けれど、東北三大祭りで知られる仙台の七夕、秋田の竿灯祭り、青森のねぶた祭りなどもこの8月初旬の時期に催されます。この夏祭りが終わった途端、急に秋の風が吹いて朝晩ひやっとする、と東北の地元の人たちは感じるそうですよ。
さて、いよいよお盆の時期、8月12日頃になると、「カナカナ・・・・」と甲高くひぐらしが鳴き始めます。夏の終わりを少し切なく感じる夕暮れですね。「ひぐらしの鳴く頃」とは、立秋で一瞬秋の気配が来て、けれど、まだまだ残る暑さのこの時期をさします。
この立秋以降の時期を「残暑」と呼ぶのです。
そもそも暑中見舞いとは「夏の暑さが厳しい時期の安否伺い」ですから、「暑中見舞い」などを出すのは、梅雨が明けて夏らしくなった頃から出すのが、季節を先取りする日本人の感覚になじみがよいと言えます。そして、立秋を過ぎたら「残暑」なので、お便りなどを出すのも「残暑見舞い」に切り替るのが目安になります。
残暑っていつから?という素朴な疑問も、こういった日本の季節を「ふしめ」で区切って感じるいわれを知ると、納得がいきますよね。
「小暑」「「大暑」と夏が過ぎてきたわけですが、8月23日ころから最後の夏の節気、「処暑(しょしょ)」。処は「とまる」という意味合いで、夏の暑さが収まり、本格的に秋がやってきます。
「残暑」っていつから?季節の節目「二十四節気」の「処暑」
長い夏休みも終わろうとするこの時期、主に関西地方などでは、夏の最大で最後のイベント「地蔵盆」が各地域で行われます。東日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、地蔵盆とは,町内のお地蔵さんをおまつりし、子どもたちのすこやかな成長を願う子供が中心となったお祭りです。
本格的な稲の実りと収穫の時期を控えて、1年の丹精込めて育てたお米の豊作を祈念する秋祭りなど、地域に根付いた季節の変わり目の行事も、この時期各地で行われるようです。
8月の初旬のが「秋の気配がたつ」立秋。この季節から、自然や風土を大切にしてきた日本人の秋が始まります。
まだ続く「残暑」を凌ぎ、夏バテや疲労回復を図りながら、豊饒の恵みの秋を迎える支度をしながら秋の到来を感謝します。
季節への考え方は、動植物や空と大地とともに生きてきた日本人の、深い智慧の結晶とも言えます。